またとりとめのない雑記。

娘の習い事で、少し離れた街に毎週通っている。
もちろん私はその習い事の間暇なので、大抵どこかで本を読んだり仕事をしたり、または東京まで大急ぎで行って買い物したりする。
貴重な自由時間だ。

今日もその日で、星野源の「そして生活は続く」を読もうとたまに来る喫茶店に入った。

そこはターミナル駅前の喫茶店にしてはいつも空いている。
ほかのチェーンのコーヒーショップやバスターミナルの前のカフェはいつも満席に近いのだが、そこで座れなかったということはない。

そこは水が一緒に出てくる”いわゆる喫茶店”で、大抵常連のお客さんがカウンターに座って話している。
店員さんは淡々としていて愛想良くしようとかはきっと思っていない。

店の奥に半地下になっている数席のスペースがあり、私はいつもそこに沈むように座って黙々と本を読んでいる。

このお店はちょっと変わっていて、一時間ワンドリンク制。ただし時間内ならコーヒー紅茶のおかわりは自由(この時点で特定できる気がする)。
お店に入って席に着きオーダーをお願いすると、「ここでは書類を広げたりの仕事は”禁止”です。あと一時間にワンドリンク頼んでもらうことになっていますが、おかわりはできます」と淡々とお店の人に告げられる。
禁止って。すごい。禁止ですよ禁止。
他に言い方があるだろうに、感情のこもらない言葉でそう伝えるのだ(でも私はこれがさほど嫌いじゃない)。

さらに二人席などに座っていると、「混んできたら移動してもらいます」と付け加えられる。
混んでるとこみたことないけど。

今日もその一連の儀式を終えて無事アイスカフェオレを飲んでいると、斜め前にサラリーマンが座ってきた。
なにせ数人分しか席のない狭い半地下。そこにふたりきり。気まずいけど私はこの本を読まねばならないのだ。

カレーをオーダーしたサラリーマン、店員さんに上記の呪文を唱えられ食い気味で「仕事しません」「30分で出て行きます」と即答。
さては常連とまでは行かないまでも何回か来ているリピーターか。
即答ぷりがおかしくてニヤニヤしそうなのをすんででこらえる。
10分後カレーが運ばれ、それを飲むように食べた彼は本当に30分でお店をあとにした。

ここに来ると、特にこの半地下の席につくと「なんとなく怪しい」「かなりうさんくさい」タイプのお客さんに出会うことが多い。
不実っぽいカップル。売れないモデルとそのファンみたいな男女。ちょっと怖い感じのお兄さんふたり。などなど。
詳しくは書けないけど会話にまったく現実感がない。しかもコソコソと話すのではなく、普通に大きな声で話すから丸聞こえ。横にいる私なんて空気みたいな扱いだ。

今日出会ったのはサラリーマンと女性一人だったので全くそういう面白い話は聞けなかったけど。

ここに来ると感じる感情みたいなのがある。
小説とか古いドラマとかでよくある「場末の酒場でひとりチビチビ飲んでいる」みたいな退廃感、そういう類のものだ。
タバコが吸いたくなる。もう9年も前にやめたけど、今ここでタバコをすすめられたら吸ってしまうだろうなと思う。

そして、他のお客の話が耳に入ってくる割には読書にものすごく身が入る。大抵一時間以内で出てしまうけど、ぐぐっと読み込める感じがして店を出た瞬間の充実感はなかなかのもの。

顔を覚えられて一連の儀式をカットしてもらえたらなあ、でも来週は行かないだろうなあなどとぼんやり考えつつお会計をし、娘を迎えに店を出た。

そうそう、星野源の「そして生活は続く」を途中まで読み進めたけど、なかなかに面白いエッセイなのでぜひおすすめです。

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